「木嶋佳苗劇場」(宝島社) メモ

 裁判記録プラス対談やエッセイなどを集めた本。木嶋佳苗に関する本は、今まで北原みのりの「毒婦」と佐野眞一が雑誌に掲載してたのを読んだことがあり、正直もう、ゲップが出る感じ。どれもこう、面白いんだけど読後感が悪く、すごく徒労感が残る。北原みのりはフェミな視点から木嶋佳苗の肩を持とうとするんだけど肩すかしをくらって疲れていたし、そもそもフェミ視点でこの人を理解しようとするのは無理がある。佐野眞一は例の差別的な視点でやっぱり読んでて疲れた。

 何で木嶋佳苗が人を疲れさせるのかというと、絶対に理解できない犯罪者的資質に加え、(女なら?)誰の中にもあるかもしれない自己愛的自我の肥大化したものが見られるからと思う。自分の中にも部分的にはあるような気がするイヤなものを超拡大して見せられるから、どっと疲れるのではないかな。

 巻末に倉田真由美岩井志麻子中村うさぎのコメントが載っていて、うしろの2人のコメントが面白い。くらたまは凡庸な人だと思うけど、あとの2人はやはり「すごいな」ってとこがあります。

 岩井志麻子
「名器自慢って霊能力と一緒でしょう。『私、霊能力ある。ほら、そこに落ち武者がいる。髪の長い女が!』と言われても証明のしようがない。お前が見えないのは霊感がないからだ、と言われておしまい。(略)佳苗の名器自慢や虚言は、自分が自慢できるものを何も持っていない、それでも目立ちたい、注目されたいという時に使う必殺技なんです。」
「今回の事件で一番強調したいのは、佳苗は自分のことを『絶対にブスだと思っていない』ということ。世間はあたかも佳苗が『ブスを自覚』し『コンプレックスを感じている』との共通認識で佳苗を語ります。でもそれは違う。佳苗は自分のことを美人だと思っているはずです。(略)たとえばAKB48のお嬢さんたちも一部のネットではブス、ブスと言われてます。本当は可愛いのに。佳苗も自分をAKB48のお嬢さんたちと同じだと。AKB48だってアンチからはブスと言われる。自分がブスと言われるのはそれと同じ構造よ、と。」

 中村うさぎ
「以前から虚言癖のある女に興味があって、木嶋佳苗のブログを読んで、彼女の虚言ぶりと自意識の複雑さに興味を持ってしまったんです。知り合いに何人か虚言癖を持つ女がいます。しかも全員太っている。(略)彼女たちに共通するのは、知性が高く、話もスマートで面白くて、しかも太っているということ。驚くほど木嶋佳苗に似ている。けれど彼女たちには大きな“盲点”があって、それは『自分のことがまったくわかっていない』ということ。彼女たちが嘘をつく様子を観察していると、嘘が興奮を呼び、テンションがどんどん上がり、嘘も加速していく。恍惚とさえしています。さらに自分の嘘に酩酊しているので、自己チェックが失われていく。(略)ちなみに、木嶋のような虚言女はダイエットをしません。ダイエットにはストイシズムが必要です。そしてストイックな人は詐欺師にはならない。」
「いくら金持ちでも、女から避けられる男は存在します。不潔だったり、凄いマザコンだったり、会話が成り立たなかったり。どんな女も絶対に引っかからない男。そんな男が婚活すれば、最初は女の容姿を気にするかもしれないけど、次第に現実を知る。結婚という現実を見る。それは親の介護をしてくれる、子供をたくさん産める、家庭的で料理が上手などどリアルな条件です。リアルな条件を求めるなら、木嶋は理想的な女だった。なにしろ木嶋は男たちの希望や幻想にすべて添えちゃう。嘘つきだから。(略)でも木嶋のように嘘や条件で選ばれるのはモテとは違う。私は木嶋がモテたとは認めません。女は体一貫でモテてナンボでしょう(笑)」

 最後のは少し異論があるけれど…。社会生活をしている限り、体一貫の状態なんて有り得なく、「体一貫で愛した、愛された」と本人が思い込んでいたとしても、実は社会的条件がたくさん入り込んでいるのが実情です。でも美しい考え方であるのは確かですね!

 掲載されているいくつかの写真を見ていて、木嶋佳苗が相当なアブラ性であることに気がついて気持ち悪くなった。確か北原みのりの本でも、裁判中、昼飯が終わって戻ってきた木嶋を見て「ツヤツヤして、唐揚げでも食べてきたのか口のまわりが光っている」と書いていた。顔のテカリ方、尋常じゃないです。