日本人は洋楽を聞かなくなった?

 ピーター・バラカンのラジオを聞いていたら、リスナーからのメールでこんなのが読まれていた。「我々が若い頃は皆洋楽を聞いたものだが、今の日本人は洋楽を聞かなくなった。今の若い者は総じて外に興味を持たなくなっているのではないか。彼らが聞いているのは日本と韓国の音楽ばかりだ」

 韓国は外じゃないのかよ!と突っ込みたくなったが、基本的にはそうだろうなと思う。実際、私も洋楽を聞かなくなったし(しかも今は韓国の音楽ばかり聞いてるし。日本の音楽は昔も今もほとんど聞かないが)。しかし「我々が若い頃は」って、相当リスナーの年齢層が高いんだろうな、この番組。今の60〜70代ぐらいの人が若い頃はジャズを聞くことがカッコいいことで、やたら昔のジャズに詳しい人がいるように、もうひと世代かふた世代下は、洋楽ロックを語るおじいさんが増えるのだろう。

 今日の放送で、この意見に対する他のリスナーからのメールが読まれていた。「日本人が洋楽を聞かなくなったという意見に同感です。特にそれを強く感じたのは、アデルがこれだけ世界中で大人気なのに、日本ではほとんど話題になっていないことです」
 これに対してバラカン氏はこう言っていた。「アデルはそれなりに悪くないが、グラミーを独占するほど、そこまでいいかな、と正直思う。今のアメリカやイギリスの、グラミーの候補になるような音楽のレベルは、もしかすると昔に比べて下がっているのかもしれない」

デモはムダ? /原発についてあれこれ

20120310 3・11から1年 ニッポン再生のキーワード(前)
20120310 3・11から1年 ニッポン再生のキーワード(後)

 イタリア人ジャーナリストのピオ・デミリア氏。「政府が嘘をつくのは、どこの国でもありうること。私がびっくりするのは、日本人には怒ってる人がほとんどいないこと。我慢強いことは、共犯関係になる。伝えるメディアがないというが、2〜3万人のデモと100万人のデモは違う。100万人ならメディアは伝える」

20120324 メルケル首相“脱原発”の裏側

 ドイツでは福島の事故のあとすぐメルケルさんが7基の原発を止めたのに、それでは不十分だとして、反原発デモに25万人が集まった。確かにケタが違う。

 河野太郎田原総一朗のラジオで「デモしても意味がない」と言っていた。デモをしても国会議員には伝わらない。官僚がブロックするし、いや世間にはこういう声もあるんですよ、と別のことを議員の耳に吹き込むから、デモをいくらしても議員には伝わらない。有効なのは、地域の国会議員の事務所に行って直接議員に伝えることだ、と言っていた。なるほど現実的な意見かもしれない。

 しかしこれだけのことがあって、それでも変わろうとしない日本という機構の磐石さはすごい。もしかして、ほとぼりさめたら元通り、だったりして?などと思う部分もあったけど、ここまでとは。少なくとも、いろいろなことが露骨にむき出しになり、日本という国が何でできているかがある程度多くの人の目にも触れるようになったとは思うけれど(それもインターネットがあったればこそ)。

 私個人で言えば、電力会社が(たぶんガス会社もだよね)あれだけうまい汁吸ってるとは知らなかった。こういうことが起こらない限り「総括原価方式」という言葉がメディアに乗ることもなかったのだろうし。

ドイツZDF フクシマのうそ /原発についてあれこれ

Part2
http://www.youtube.com/watch?v=uOgoZDDsRkc
 すごくよくまとまってて、日本の問題点がヒジョーによくわかる番組(原発問題は日本の問題が凝縮されている)。ドイツ人すげえ。アマカダ〜リ(天下り)。福島第一にいる専門家は皆相当な被曝をしており、そのうち福島第一には誰も専門家がいなくなるかもしれない、4号機がどうにかなったら周辺には誰もいることができなくなり、他のユニットも制御できなくなる、のくだりはさすがに背筋がゾッとした。

 いい人だ。東電幹部や政治家や官僚で、そして日本の大手マスコミの人で、この人のように泣ける人がどれだけいるだろう。エリート層に優しさがないということは、やはりその社会は優しさのない社会なのだ。

 昔、日本でものすごくかしこいといわれている大学の医学部の人と話す機会があった。その人はかつてある原発のそばにある病院に勤務していたことがあったそうで、そこでは原発事故が起こった場合の対応のマニュアルがあったそうだ。「まずはこういう人をどうして、こうして、とか細かく言われてたけど、そんなん、何かあったら自分が真っ先に逃げるに決まってるやん、なあ」とその人はしれっと言っていた。たぶん、そのとき口ポカンだったと思う、私。

 知り合いのひとりが原発賛成派だと人づてに聞いた。ある程度知的でリベラルな人は普通、原発には反対だろうと私は昔から思っていたので、へえー、と思い、次にその人に会ったら原発について話をしたいと思ってた。「いくら安全だといっても、事故の確率が0%というわけじゃなし、でもその万一の事故の場合の被害が計り知れなさすぎる。途方もなさすぎる。だから原発は『割に合わない』んじゃない?」と言おうと思ってた。その話をする機会がくる前に福島の事故が起こった。未だに話はしてない。何でその知り合いが原発賛成なのかと想像してみると、まあ考えはいろいろあるだろうけれども、セルフイメージが多分に関係している気がする。自分がどういう立場のどういう人間でありたいか。理知的な人間はどういう考えを持つか。

 数年前から私は「日本人は立場が全てに優先する人たちだ」と思っている(「東大話法」という本でも日本人立場主義がとなえられているらしい)。それに気づいた時は、そうかあ立場なんだー、と思って、友達とかに「日本人って立場が全てやねん! 立場が全てに優先するねん。自分の考えとか欲求より立場のほうが上で、それを無意識にやるねん!」と熱く語ったものだけど、友達からは「はぁ、それがどしたん」みたいな反応しか返ってこなかった(当然ですね)。

 ZDFの番組でも東電の体質について取材されているけれども、電力会社の内部が相当いい加減であることは、今までちょこちょこ事故がある度に表に出ていた。放射性物質をバケツで処理していたとか、棒を釜の中に落としたとか、事故をたくさん隠蔽していたとか、どういう会社やねんそれ、ということは普通にニュース見てたらわかったはずだ。それでも普通に原発を容認している人が世間には多いということが、普通に不可解だった。

Televison - Blow Up (CDの整理)

 CD処分に当たり整理中。ライブ盤の「Blow Up」を聞き返す。2枚組で1枚目はだるいんだけど、2枚目がカッコ良すぎる。インプロヴィゼーションが長く、Little Johnny Jewel / Friction / Marquee Moon / Satisfaction(ストーンズのカバー) の4曲しか入ってないんだけど、前の3曲が素晴らしく、スタジオ盤よりずっとカッコ良い。

 昔の映像ないんかなとyoutubeを検索してみた。再結成後のはたくさんあるけど、さすがに昔のは少ない。パティ・スミスはけっこう残ってるのになあ…。イギリスのテレビ番組OGWTのがあった。ネットの共有精神に感謝。

 うーーん、さすがにカッコいい。美しい。鶴の首ですか? この憂鬱で神経質な感じ、たまらんなあ。

 時代くだって2011年。他は普通のおっちゃん(じいさん?)だけど、トム・ヴァーラインだけは多少雰囲気保ってるかな。

 ところで Television といえば、昔友達が教えてくれたんだけど、空耳アワーに出てきたことがあるらしい。I See No Evil が「足のイボ」。曲の後半は絶叫しながら連呼してて爆笑もの。聞く度に思い出さざるを得ない。Televisionは神経質なところもあるけど、ゆる〜い部分もあり、Venus という曲の「ハァ?」というのも聞くたびに気が抜けてしまい、名盤 Marquee Moon の2曲目までは笑ってばかり。

多様な価値観を認める余裕

 ヨーロッパ帰りの上杉隆が「ヨーロッパにあって日本にないものは、多様な議論を起こすような、多様な価値観を認める余裕」とラジオで語っている。

 多様な価値観か…。たしかに、ない。意見が違う人を頭から否定するし、また意見が違う人のほうもやたら頑なで相手の話が聞けない。当たり前よね。「聞いてもらったことがない」んだから。

 ものをいえば唇寒し。日本人を最も言い表している言葉のひとつ。だからみんな、何も言わない。何も言わずに自分だけ要領よく人目につかないようにうまくやろうとするんだわな。最近ようやくわかってきたよ。

 しかし、黒いカラスを白いと言い張る、というか心から思い込む、見えているものを見えないと言い張る、というか心から見えないと思い込む、それも空気によって、空気を読んで。そういう国民性は、ほんとどうにかならんものか。たぶんならない。

みんな橋下が嫌いなのね

 面白いくらい、周りの人たちが全員、橋下が嫌いなので笑ってしまう。嫌いというか、橋下が巨悪だ、敵だと疑いの余地なく完全認定されているらしく、「あの、あの、私は別にいいんじゃないかと、あの」と言いかけるともう総攻撃を食らってしまうので、とっても言いにくい。

 この間は友達(女)がまた当然のように橋下を罵るので、「私はハシモトは嫌いだけど、今はこれでいいと思うよ」と言うと、えええ〜!信じられない〜!と驚かれてしまった。彼女になぜ橋下が嫌いなのかと尋ねると、「生理的に嫌い!」とまず返ってきて、それを聞いてまた笑ってしまった。「あのー、私、男の知り合いに何で宮台が嫌いなのか聞かれて、生理的に嫌いと言ったら、『女の人ってすぐ生理的に嫌いって言うよね』って言われたよ」と言ってもっとムカつかれてしまった。しかしその友達は、新聞も取っているし(新聞なんて取らなくていいと私は思うけど)本もすごく読むし、知的な人なのだ。橋下嫌いにももちろん理由はある。でもそんな理由、あげつらわなくていいくらい、橋下は悪にきまっているのだ。私がなぜ宮台が嫌いかと聞かれて、ええっ、そんなん説明せなわからんの?と思ってしまうのと同じように(同じなのかな?)。

 皆さん、案外公務員に対して理不尽に思ってないのよね。「公務員という小さな悪に目を向けさせることでもっと大きな悪(巨大企業とか大金持ちとか?)から目を背けさせようとしている」とか言うみたいなんですけど、今の日本にとって一番の巨悪は公務員と官僚システムだと思いますけどね。

 たまに見てるここのブログでは橋下のことを「正直な話、公務員改革だけやったらあとは用無しの人物だ」っていってる。それもひとつの考え方かも。例のアンケートは凍結になったそうだけど、あれじゃあねえ…。職務時間中に組合活動をすることに的を絞るべきだったんじゃないかな。多分、組合にうんざりしている公務員だってたくさんいるはずだし、それを見込んでのことだと思うのだけど。

 テレビやラジオをみれば、普段は冷静な香山リカ山田五郎まで、橋下に関しては、え?と思うほど、冷静さも理屈もへったくれもなく悪く言っている。朝生では橋下を擁護する東浩紀にまで、あなた何よ!という感じだった(もともと知り合いで地が出てしまったのだろう)。何だか踏み絵みたいで面白い。

韓流エンタメ日本侵攻戦略/小野田衛 本の感想

 しばらく前に読んだものだけどメモとして。少しk-popを見ていると、何でこうなんだろう?と謎に思うことがあれこれ出てくる。何でダンスがこれほどプロフェッショナルなのか、に始まって(もともと韓国人が踊り好きでダンスがうまいというのはあるけれど、それに収まりきらない要素がある)、何でいちいち事務所が前に出てくるのか、歌番組で1位になったアイドルがいきなりグラミーやアカデミー賞よろしく「○○社長、○○オンニ、○○オッパに感謝します。それから○○さん、○○さんにも…」と蕩蕩とまくし立て出すとか、それから活動って何? カムバックって何? 何であんなに全部の曲にラップが入ってるの? 等等。

 この本を読むと韓国の音楽業界のしくみに対してかなり理解が深まる。これほど世界中で流行しているk-popが実はそれほどお金の面では儲かっていないであるとか。かなり儲かっているのは日本ぐらいで、あとの国への進出は持ち出しばかり多く、日本で得た利潤でそれを補っている状態であるとか、実はそれが今まで日本の音楽業界が外国への進出に積極的でなかった理由であった(日本国内のほうが儲かる)とか…。先日見たニュースで韓流の輸出品としての利益が数百億円レベルだと言っていたけれど、この本での記述を証明しているなと思った。

 しょうむないことでは、T-araやダビチの事務所の社長が相当な大物らしいことや、ピが弟子のMBLAQに「死んでから寝ろ!」と言ってしごいた、とか、カムバックや活動期間などの不思議な慣習はソテジが初めたものであるとか、芸能事務所のしくみや関係など。k-popファンの人には当たり前のことかもしれないが、よく知らない人には面白く、k-popを見る際の基礎知識となる。

 どうもタイトルがケンカンが買うことも当て込んだような扇情的なものになっており、内容にあっていなくて損をしている。フジサンケイグループの扶桑社の微妙な立場?

 それにしても、k-popへのこまごまとした謎はまだまだ消えない。アイドルたちが奴隷契約のもと、中国雑技団なみに若い時から訓練されて作られているのはわかるが、あの楽曲のクオリティの高さ。ひと昔前(それこそソテジワアイドゥルとか。ふた昔前?)は韓国のポップスは、外国のものを取り入れてはいるが、個人的にはどうにもダサさが抜けきらないものに感じられ、あまり魅力的ではなかった。もちろんちょっとしか知らなかったし、それだけではなかったのだろうけれど、ちょっとダサい韓国風ダンス音楽とバラードばっかし、と思っていた(イ・バクサは好きだった)。しかし最近知った韓国アイドルの曲の中には驚くほど素晴らしいものがたくさんある。

 現在の日本や欧米ではシンガーソングライター方式が一般的なので、こういう完全分業体制のもとでの作曲システムってどうなってるんだ?というのがかねてからの謎なのです。作詞作曲者を調べると、どうも複数名のチームで作っていることが多いらしい、とか、有名な作曲チームがいくつかあるらしい、とかわかるのだけど、それらの人がどういう人なのか、どうやって育成されるのか、育成なんかしないのか、よくわからない。そのへんもわかるような本が出たらいいな。