マンション自治会というもの

 マル激で神保&宮台が「マンションの自治会というものは日本人には本当に向かない」というようなことを言っていたことがある。じゃあ外国人はどうやって解決しているのか教えてほしい。

 マンションの自治会というものに、今まで2ヶ所、行ったことがある。

 1ヶ所のは、つねづね家にまわってくる自治会からの文書を見て、何かと勝手に決めてるなあ、必要のないものに独断でお金使ってるなあ、と感じていた。「安心安全のため」とかいって、耐震検査とか防犯カメラとかに数百万。私には無駄としか思えなかった。きっと自治会はひどいところに違いない。と思って会議に行ったら、何のことはなくしゃんしゃん自治会。参加者は思ったよりいたが、誰もほとんど発言せず、静かなもんだった。拍子抜けした。

 会議が終わってから管理会社の人に「自治会ってどこもこんなもんなんですか?」とそっと聞いてみた。ここの管理会社は電話した時に出る営業の人は不動産屋みたいにチャキチャキした人が多いのだが、会議に来ていた人は、温和そうな白髪まじりのおじさんだった。おじさんはこう言った。

 「いいえ、ここの自治会は、ものすごく平和です」
 「えっ、ていうことは、普通は」
 「普通は、ものすごくもめます。こんな平和なことはありません」

 ものすごく、のところに静かだか感情がこもっていて、おじさんの普段の苦労がしのばれた。

 もう1ヶ所の自治会のほうは、ふるーいところで、人数も多く、参加者はお年寄りが多かった。若い人もいたのだが、発言が多い人が70代らしき人が多いので、特にそう見えたかもしれない。

 こちらの会議はもう、どう表現していいかわからんくらい、紛糾した。からむのが大好きな人たちがいちいち細かいことにからみまくり、理屈も道理も通らず、まったく会議は進まず、何も決まらない。決まるわけがない。「バカヤロー」だの「出て行け」「黙れ」「お前こそ黙れ」といった怒号が飛び交う。そしてここが日本人らしいところなのだが、「黙れ」とか罵倒しながらも、ちょっとえへっと笑っていたりして、微妙に「ごっこ」くさいのだ。ためにする怒号。それだけに、なおさら会議は進まない(ほんとに意見が違うから紛糾してるだけなら、意見さえ合えば進むはずだもんね)。予定の時間の倍以上かかってもまだ終わらない。

 私は、前のことがあったので、なるほど普通の自治会ってこういうもんなんだな、前に管理会社のおじさんが言ってた通りだな、と感じていた。それで、帰る時に、こっちに来ていた管理会社のおじさんにも、そっと「自治会ってどこもこんなもんなんですか?」と聞いてみた。こちらも温和そうなおじさんは、きっぱり「いいえ」と答えた。

 「私は今日ヘルプで来たんですけど、びっくりしてます。普通は、もっと平和です」

 どっちが本当の姿なんや?と思った。たまたまこの2ヶ所があまりにも両極端で、この間のどこかに真実はあるということなのだろうか。

 いずれにしろ、あれは確かに日本人には難しいと思うわ。他に方法もないしああするしかないのだろうけど。友達のいるマンションでも、入ったときにはペット可だったのに、のちに自治会で禁止になった、と嘆いている人もいる。うるさい少数の人の意見が通っちゃう上に、自浄作用がないからねえ。