トムとジェリーは偉大だ。

 この間ある大型ショップに買い物に行ったら、キッズコーナーというんですか、親が買い物している間に子供を遊ばせておく場所があって、そこの大型テレビで「トムとジェリー」を流していた。お、トムとジェリーだ、と思ってしばらく見ていると、すっごい面白いのだ、トムとジェリー。面白くて、立ったまま2エピソードほど見てしまった。

 子供の頃はトムとジェリーってあまり好きではなかった。ワンパターンだし、猫が悪いほうだし(よく見たら実はジェリーの方がズル賢かったりするのだが)、けっこう残酷だし。でも今見ると、すごく映像がきれいで、リズム感が素晴らしく良いし、洒落ているし、そして意外なことに、結構笑える。セリフほとんどないのに、非常に良くできたスラプスティックで、とても楽しい。トムとジェリーって名作なんだなあ、と思った。

 もうひとつ面白かったのは、そこで見ている子供の反応で、全員がものも言わず、体もほとんど動かさず、魂を吸い取られたように画面に見入っているのだった。面白い場面では私は笑ってしまったりするのだが、子供は笑いもせず、ただ見入っているのだ。以前「探偵ナイトスクープ」で、幼児にタケモトピアノのCMを見せるとどんなにむずがっていた子供もぴたっと泣き止むというのがあって、実験したら実際に大騒ぎしていた数十人の子供がCMが流れてきた途端、ぴたっと静かになるという驚愕の映像だったのだが、ちょっとそれに似ていた。もしかしたら、トムとジェリーにもタケモトピアノCMと同じような効果があるのかもしれない。

 私はしばらくの間そこで見ていたので、子供は何度か入れ替わり、別の親が別の子供を連れてきたりしたが、ほぼ全員が同じような様子だった。「面白い?」と子供に何度か聞いている親がいたが、子供は返事もせずに画面を見ていた。一人だけゲーム機を取り出してやり始めた男の子がいたが、ゲーム機をいじる時間よりテレビを見ている時間のほうが長かった。

 私が見たエピソードがまたちょい感動的で、ジェリーがサーカスから逃げ出したライオンに遭遇するのだが、そのライオンは、自分はサーカスが嫌でたまらない、ジャングルに帰りたい、とジェリーに訴える(ここのみセリフあり。字幕版だったので英語で言ってた)。ジェリーとライオンは協力してトムをやっつけ、ライオンは無事アフリカ行きの船に乗り、帰っていく。ジェリーとライオンは涙を流して手を振り合う。レトロ感もたまらない。

 と思ったら動画あった!

 もうひとつのも良かったんだよね。ジェリーが「こんな田舎には飽き飽きしました。都会へ行きます」とトムに書き置きしてハリウッドに行く話。もちろん結末は、都会はひどいところでスイートホームに帰ってきたジェリーがトムにキスしておわり(こっちはすぐには動画見つからなかった)。