韓流エンタメ日本侵攻戦略/小野田衛 本の感想

 しばらく前に読んだものだけどメモとして。少しk-popを見ていると、何でこうなんだろう?と謎に思うことがあれこれ出てくる。何でダンスがこれほどプロフェッショナルなのか、に始まって(もともと韓国人が踊り好きでダンスがうまいというのはあるけれど、それに収まりきらない要素がある)、何でいちいち事務所が前に出てくるのか、歌番組で1位になったアイドルがいきなりグラミーやアカデミー賞よろしく「○○社長、○○オンニ、○○オッパに感謝します。それから○○さん、○○さんにも…」と蕩蕩とまくし立て出すとか、それから活動って何? カムバックって何? 何であんなに全部の曲にラップが入ってるの? 等等。

 この本を読むと韓国の音楽業界のしくみに対してかなり理解が深まる。これほど世界中で流行しているk-popが実はそれほどお金の面では儲かっていないであるとか。かなり儲かっているのは日本ぐらいで、あとの国への進出は持ち出しばかり多く、日本で得た利潤でそれを補っている状態であるとか、実はそれが今まで日本の音楽業界が外国への進出に積極的でなかった理由であった(日本国内のほうが儲かる)とか…。先日見たニュースで韓流の輸出品としての利益が数百億円レベルだと言っていたけれど、この本での記述を証明しているなと思った。

 しょうむないことでは、T-araやダビチの事務所の社長が相当な大物らしいことや、ピが弟子のMBLAQに「死んでから寝ろ!」と言ってしごいた、とか、カムバックや活動期間などの不思議な慣習はソテジが初めたものであるとか、芸能事務所のしくみや関係など。k-popファンの人には当たり前のことかもしれないが、よく知らない人には面白く、k-popを見る際の基礎知識となる。

 どうもタイトルがケンカンが買うことも当て込んだような扇情的なものになっており、内容にあっていなくて損をしている。フジサンケイグループの扶桑社の微妙な立場?

 それにしても、k-popへのこまごまとした謎はまだまだ消えない。アイドルたちが奴隷契約のもと、中国雑技団なみに若い時から訓練されて作られているのはわかるが、あの楽曲のクオリティの高さ。ひと昔前(それこそソテジワアイドゥルとか。ふた昔前?)は韓国のポップスは、外国のものを取り入れてはいるが、個人的にはどうにもダサさが抜けきらないものに感じられ、あまり魅力的ではなかった。もちろんちょっとしか知らなかったし、それだけではなかったのだろうけれど、ちょっとダサい韓国風ダンス音楽とバラードばっかし、と思っていた(イ・バクサは好きだった)。しかし最近知った韓国アイドルの曲の中には驚くほど素晴らしいものがたくさんある。

 現在の日本や欧米ではシンガーソングライター方式が一般的なので、こういう完全分業体制のもとでの作曲システムってどうなってるんだ?というのがかねてからの謎なのです。作詞作曲者を調べると、どうも複数名のチームで作っていることが多いらしい、とか、有名な作曲チームがいくつかあるらしい、とかわかるのだけど、それらの人がどういう人なのか、どうやって育成されるのか、育成なんかしないのか、よくわからない。そのへんもわかるような本が出たらいいな。